5月の課題(5月20日〆切) テーマ:わたしの近所


  わたしの家の近くには、BN公園という公園があります。公園の隣には女子高があって、いつも、友だちと過ごす時間をなごり惜しむ生徒たちが、「ねーねー、ビーエヌいこーよ」と、もう少しだけ一緒にいたいという気持ちで、誰彼ともなく誘い合って、ただこの公園で時間を過ごしています。
 少し離れた場所には、国立大学の附属小学校もありますが、こちらの生徒たちは、まだ、友だちとさよならするときの寂しさ、後ろ髪を引かれる思い、また一緒にいることの居心地の悪さからくる嫌悪感、といった感情を持ちあわせておらず、ただ帰路となっている公園の途中や出口で、「じゃーねー」とだけ言って、とてもさっぱりと別れるのです。この子たちがそうした感情の機微に目覚めるのは、もう少し後のことでしょう。

 さて、公園はもちろん公営の場所であり(県、市、区、どこの管轄なのでしょうか?)、いくら女子高生の利用が多いといっても、それに合わせた設備投資などできるわけはなく、誰も使わないようなブランコやジャングルジムなどの遊具が置かれ、利用目的ごと、例えばサッカーがしやすいように芝生が敷かれている、バーベキュー設備が置かれている、花見に適した桜の配置や通路脇のスペース、ジョギングコース、など、親切にブロック分けされているのですが、これはほとんど無意味で、利用者たちは空いているところから順に場所を埋めていって、結局はどんな場所でも出来る活動(アイスを食べるとか)をするだけなのです。言ってみれば、普通の公園のありさまです。
 唯一、それがそれとして利用されているジョギングコースは、平日の昼はただ沼(この公園の真ん中には沼があります。というか、この公園は沼を中心に成り立っているのです)をぐるりと一周する通路なのですが、足にやさしいよう作られた路面には、夜になると多くのランナーたちが集まってきて(あきらかに、走る距離よりこの公園まで来る道のりのほうが長いんじゃねーのーといった人とか、夜なのにサングラスとか)、みんなで一緒に沼の周りをぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる回っています。

 女子高生がよく利用するという特性上、よこしまな目的を持って公園にやってくる者も中にはいて、行政(県、市、区?)としては、そこだけはきっちりと対策をしようと、民間の警備会社、なかでも一般には知られていない、もちろんふつうの家庭ではセキュリティ契約など出来ない、要するにVIP御用達というのでしょうか、政府や自治体からの信頼も厚い、そういった警備会社に委託して公園の治安を守っています。彼らは真のプロフェッショナルですから、怪しい人物は入り口でつまみ出されて、なかに入ることすら叶いません。一見すると、公園としてはものものしい、みんなが気軽に利用できる雰囲気ではないと思われるかもしれませんが、そこは真のプロフェッショナル、彼らは善良な利用者からは気づかれもしません。怪しい者を発見するやいなや、さっと現れて一瞬で事をすまし、近くにいる人も何が起こったのか全くわからない、というかその人にとっては何も起こらずにその一幕は完遂されるのです。

 だんだんとこの公園についてわかってきたでしょうか。わたしも、こうして文章にして書いてみてはじめてわかったことがたくさんあります。なんといっても、警備の件は広報(県、市、区?)の目立たないところにちらっと「BN公園はみなさんが安心して利用できるよう十分な対策をとっています。心配せず公園で楽しい時を過ごしてください」と書いてあるだけです。目ざとくそれを見つけ、広報の最後に記載された番号に問い合わせてはじめてわかったことなのです。今思うと、いまではほとんどの公園に見られる「関係者以外立ち入り禁止」という立て札がBN公園にないのは、この自負からきているのでしょう。

 まだまだ書きたいことはたくさんあるのですが、字数は足りているようですし、公園の魅力も伝わったことでしょう。
 それに、実を言えばわたしは都会が好き。だれにでもひらかれていて、だれにでも温かくなく、だれにでも冷たくない都会に出ていたい。人混みに癒やされて、その隅っこで息をしていたいのだ。

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